別居していても、本人との生計維持関係が認められれば、被扶養者になります。健康保険の被扶養者の範囲は、被保険者の直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母等)、配偶者(事実上の婚姻関係と同様の事情にある場合を含みます。以下同じ)、子、孫、兄弟姉妹のほか、同一世帯にある3親等以内の親族です。したがって、別居していても、両親は被扶養者になることができます。ただし、生活費の半分以上を被保険者の仕送りなどによって、賄っているなど、被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていなければなりません。なお、被扶養者の年収は130万円(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円)未満であることが必要です。
パートタイマーであっても、被保険者の条件に該当した場合、健康保険に加入することが義務づけられています。配偶者が勤務先で被保険者となった場合には、被扶養者のままではいられません。また、年収が130万円(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円)以上ある場合にも、被扶養者のままではいられなくなります。
扶養家族も健康保険の給付を受けていますが、保険料はかかっていません。健康保険上の保険料は、本人に対するものですので、扶養家族が何人いても保険料は変わりません。保険料は、標準報酬月額(賃金)に変動があったときだけ変わります。なお、保険料は、毎年4月、5月、6月の3ヵ月間に受けた賃金の平均額を基準に、その年の9月から翌年8月までの1年間の標準報酬月額が決定されます。ただし、標準報酬ごとに区分された等級が2段階以上に上下し、かつ、3ヵ月間連続した場合は、4ヵ月目から保険料が改定されることになっています。
被保険者になっている限り、給料の支払いがなくても保険料は支払う必要があります。一般的に、給料が支払われない間の保険料は、事業主が負担し、後日、本人は事業主との話し合いにより、事業主が立て替えた分の保険料を返すことになります。保険料は欠勤する前の保険料を使用します。なお、傷病手当金は、病気やケガの療養のため労務不能となり、賃金が支払われないとき、連続する3日を含み4日目から、1日につき支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割った2/3に相当する額(支給開始日以前の被保険者期間によって算定基準が異なる)が、通算して1年6ヵ月間にわたり支給されます。
本人または家族が高額な医療費を負担した場合、一定額(自己負担限度額)を超えた分は、高額療養費として、健康保険組合から払い戻されます。自己負担限度額は所得によって異なります。
同一世帯で高額療養費の対象になる医療費の支払いが1年間で4回以上あった場合、4回目からは自己負担限度額が下がります。これを「多数該当」といいます。このほか、特定疾病に指定されている血友病や人工透析治療を行う必要のある慢性腎不全など、長期にわたり高額治療が必要な場合は1ヵ月の自己負担額が10,000円までとなっています(70歳未満で標準報酬月額53万円以上の方が人工透析を受ける場合の自己負担額は20,000円となります)。
健康保険では、窓口でかかった医療費の一部を支払えばよいことになっています。窓口での負担金以外の医療費は、健康保険組合から社会保険診療報酬支払基金を通じて、1ヵ月ごとにまとめて各医療機関に支払われています。これは、健康保険組合が各医療機関から直接請求を受け、その支払いをした場合、事務が大変煩雑になるのを避けるためと、各医療機関からの診療報酬明細書が適正な額かどうか審査するためです。その上で、健康保険組合はさらに審査を行っており、医療費が適正に支払われるよう努めています。
どの病院でも再診の場合と同じ額の医療費が請求されます。その他、往診や時間外、休日、夜間診療には通常の料金に規定の割増料金が加算されます。
移送の給付として認められるのは、患者の移送にかかった交通費や、移送を請け負った人の賃金や宿泊料などの、いわゆる患者の移送に必要であると医師が認めた費用のみです。患者の寝具などの運送費などは認められません。
被保険者が出産した場合は、1児について、産科医療補償制度加算対象出産の場合は50万円(死産を含み、在胎週数第22週以降のものに限る)、それ以外の場合は48万8000円の出産育児一時金が受けられるほか、出産手当金も受けられます。被扶養者が出産した場合は、1児について、産科医療補償制度加算対象出産の場合は50万円(死産を含み、在胎週数第22週以降のものに限る)、それ以外の場合は48万8000円の家族出産育児一時金が受けられます。出産育児一時金は、妊娠85日目以降のお産であれば、死産、人工妊娠中絶を問わず、受けることができます。なお、出産手当金は、被保険者が出産のため会社を休み給料を受けなかった場合、出産の日以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から出産の日の翌日以後56日目までの期間、欠勤1日につき、支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割った2/3に相当する額(支給開始日以前の被保険者期間によって算定基準が異なる)が支給されます。なお、傷病手当金と出産手当金の両方が受けられるときは、傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額が支給されます。
複数出産の場合は、被保険者、被扶養者とも出産育児一時金、家族出産育児一時金はそれぞれ複数人分が支給されます。
受けられます。出産が予定日より遅れた場合は、その日数が延長されることになっています。したがって、「98日プラス遅れた日数」が支給期間となります。
被保険者または被扶養者が海外で診療を受けた場合、国内での療養費を基準として、健康保険組合が認めた療養費の支給が受けられます。ただし、被保険者の場合は、業務外の病気やケガに限ります。業務上による病気やケガの場合は、労災保険の対象になるためです。手続きとしては、海外療養費の支給申請書のほか、診療内容明細書や領収書、パスポート等海外渡航の事実が確認できる書類の写し、海外の医療機関等に照会を行うことの同意書に日本語の翻訳文を添付して提出します。なお、海外療養費の支給額算定に用いる邦貨換算率は、支給決定日現在における外国為替換算率(売レート)を使用します。払い戻しされる金額としては、日本国内で病院にかかったときの治療費に準じて計算されたものから一部負担金を控除した額になります。
意識不明のときには保険証を提出できませんから、この期間の入院については療養費が支給されます。しかし、意識回復後は保険証の提出ができなかったやむを得ない理由があった、ということが認められない限り、療養費の支給は受けられません。
必ずしも健康保険上の被扶養者である必要はなく、また一定の親族関係、同一世帯である必要もありません。家族がいなかった場合は、埋葬を行なった人が埋葬費の支給を受けられます。
亡くなった家族が被扶養者であれば家族埋葬料が支給されますが、被扶養者でない場合には家族埋葬料は支給されません。ただし、亡くなった家族が加入していた健康保険組合や国民健康保険などから埋葬料(費)・葬祭費を受けることができます。
本格的な少子高齢社会の到来により、介護を必要とする人は、急速に増加し、その程度も重度化、長期化しているため、医療費の圧迫要因になっています。また、核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況も変化してきました。このため、老後の最大の不安要因である介護を社会全体で支え合うしくみをつくるため、介護保険制度が創設されました。
市区町村の区域内に住所を有する65歳以上の人を第1号被保険者といい、介護保険料は年額18万円以上の老齢年金受給者の年金額から天引きされます。ただし、年額18万円未満の場合は、個別に納付します。また、市区町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険の加入者を第2号被保険者といい、介護保険料は健康保険料等に上乗せして徴収されます。第2号被保険者の場合、介護保険による介護サービスは受けられませんが、初老期の認知症、脳血管疾患など加齢に伴う病気によって、介護が必要になったときに限り、給付が受けられます。